2008年10月には新潟県新潟市に二つ目のキッズデザインパークがオープンしました。新潟県新潟市、アイフルホーム新潟東店。全国二つ目のキッズデザインパークのオープンと同時に、その一角にコンセプトショップ&ギャラリー「えほんの森」もまたオープンしました。ここの大きなテーマは「絵本による親子のコミュニケーション」です。
いま、ゲームを含めて子どもの生活環境のデジタル化が急速に進んでいますが、親子のコミュニケーションは逆に減っています。子どもとコミュニケーションをとろうとしても、そのとり方がわからないという親も増えているのです。しばらく前までは、親戚や近所、いとこなどに赤ちゃんがいて、あやしたり、だっこやおんぶ、おもちゃで遊び、授乳をするというのは当たり前のことでした。そういうことから自然に赤ちゃんへの接し方を学んでいたのですが、結婚して、出産をして初めて赤ちゃんに触るのでは、どう扱っていいのかわからなくても当たり前です。
子どもと十分にコミュニケーションをしていると思っている親でも、子どもの将来のために早く文字や数字を教えたいと考えて、教育的な効果のあるという絵本ばかり与えてしまい、子どもにとっては本当のコミュニケーションになっていない場合もあります。 こうした現代にあって、親子が触れ合う機会をつくったり、会話のきっかけをつくったりするために、絵本の読み聞かせはうってつけなのです。絵本を読む場合は子どもを膝の上にかかえたり、横に座らせたりするので、自然にスキンシップができますし、絵本の内容をきっかけに会話をすることもできるからです。絵本を媒介させることで、親子の距離をぐっと縮めることができるのです。子どもは親の存在を体で感じ、楽しい時間を共有することができます。そのひとときは、子どもにとって心が安らぐ時間でもあります。絵本を読んであげていると、子どもは「この絵本はお父さんに読んでもらう絵本だ」「これはお母さん」と決めている場合があります。同じ絵本を同じ人に読んでもらうと落ち着くからなのでしょう。子どもがそう思うのは、まさに心のコミュニケーションがあるからです。
親子が時間と空間を共有する絵本のある空間が、いまの家庭には必要なのではないでしょうか。そこで、アイフルホームはアンパンマンの出版でも有名な絵本知育玩具で100年の歴史を持つ老舗のフレーベル館と協力して、絵本の読み聞かせの実演や絵本の販売を行う「えほんの森」をキッズデザインパークにつくったのです。
長く良質な絵本を編集してきた、フレーベル館編集局次長第一編集部長の天野誠さんは絵本の大切さについて次のように言います。
絵本はストーリーや絵から離れていろいろな話をしたりすることもできるという点がテレビゲームとの大きな違いだと思います。子どもはストーリーに関係のない絵を見つけて、勝手に話を膨らませたりします。そこに子どもの自由な想像力の発露があるのですが、そういうことはテレビゲームではできません。発想が飛んだり、前に戻ったりするのが子どもの特徴です。その特徴に合うのが『立ち止まることができる絵本』なのです。
絵本を読んで勉強してほしいと思っている親もいますが、絵本を読むことは知識を与えるためではないということを知ってほしいと思います。何よりまず、絵本はコミュニケーションなのですから。
そのことを知ったうえで、子どもが『どうして、なぜ』と聞いてきたら、それを面倒と思うのではなく『じゃぁ一緒に調べてみよう』というふうに持っていくこともできると思います。さらに、好奇心を刺激しながら、活動の場所を広げていったり、感性を豊かにしたりするような展開もできると思います。絵本を見るだけで終わりにしないことも大切です。
特に好奇心の強い幼児期の子どもは五感をフル活用してあらゆる知識を取り込んでいますから、体験なしで頭だけで学んでいたのでは本当の意味で知識が身につくことはありません。絵本から体験へ、体験から絵本、さらに絵本から体験へという反芻が大切だというのは、誰もが納得できることでないでしょうか。
天野さんはもう一つ、長い歴史を持つ出版社ならではの大切なことを教えてくれました。
「絵本のもう一つの価値は、長く読み継がれるところに評価があるということです。子どもの頃に読んでいた絵本は、大人になってからも宝物のように扱われますし、20年、30年と読み継がれる絵本は、子どものときに読んだ絵本を、親になってから『お母さんが読んでいた絵本だよ』と子どもに買ってあげることもできます。ですから、子どもが本当に興味を持った絵本は、図書館で借りてくるのではなく、できるだけ買ってほしいと思います。買ってあげることで、その絵本が『宝物』になるからです。
絵本は心の栄養という言い方もしますが、知識とか勉強とかいうこと以前の人間の深いところにある心の豊かさを育てる、目には見えない価値を与えられるのが絵本なのです」
大人になっても手放すことができない絵本や、忘れられない絵本が誰にもあるものです。たとえば、内容はおぼろげにしか覚えていないとしても、絵本を読んでくれたお母さんやお父さん、おじいちゃんやおばあちゃんとの時間やそのときの雰囲気は心の奥底にひっそりと、でも確かに残っているのではないでしょうか。
そういう思い出をすべての子どもたちに持ってほしい、「えほんの森」の願いです。
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