【専門家監修】冷蔵庫の地震対策|転倒・移動を防ぐための基本

鈴木 早織
鈴木 早織

・防災士
・救急救命士
・整理収納アドバイザー1級
・防災備蓄収納2級プランナー
20年にわたる消防局勤務での7,000件以上の災害出動経験を活かし、命を守る現場の視点から、実践的な防災と整理収納のノウハウを伝えています。

地震大国である日本では、いつ大きな揺れが来るか分かりません。特に小さなお子さんがいるご家庭では、家の中の安全対策が何よりも重要です。キッチンにある冷蔵庫は、家電の中でも最も重く、転倒すると命に関わる危険性があります。実際に過去の地震では、冷蔵庫が倒れて避難経路を塞いだり、下敷きになって重傷を負ったケースも報告されています。一方で、適切な対策を施せば、冷蔵庫の転倒や移動を大幅に防ぐことができます。

この記事では、専門家の知見をもとに、今日から始められる実践的な冷蔵庫の地震対策をご紹介します。

なぜ冷蔵庫の地震対策が必要なのか

冷蔵庫の地震対策を考える前に、まずはなぜこの対策が必要なのか、その背景と危険性について理解しておきましょう。

地震時の冷蔵庫による被害の実態

調査によると、地震による家具類の転倒は住宅内での負傷原因の約3割から5割を占めています。(出典:東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」なぜ家具類の転倒・落下・移動防止対策が必要なの?)冷蔵庫は一般家庭にある家電の中で最も重量があり、大型のものでは100kgを超えることもあります。この重量は、地震の揺れによって凶器となり、転倒すると身動きが取れなくなった人が下敷きになる危険があります。

過去の大地震では、冷蔵庫が転倒して避難経路となる廊下やドアを塞ぎ、逃げ遅れるケースも発生しました。また、冷蔵庫が移動して壁や他の家具にぶつかり、二次的な被害を引き起こすこともあります。特に築年数の経った住宅では床の強度が低下している場合もあり、重い冷蔵庫が激しく揺れることで床が破損する危険性もあるのです。

子育て家庭における特有のリスク

小さなお子さんがいるご家庭では、冷蔵庫の転倒リスクはさらに高まります。子どもは好奇心旺盛で、冷蔵庫のドアを開けたり、引き出しを引っ張ったりすることがあります。地震の揺れと子どもの動作が重なると、バランスを崩して転倒する可能性が通常よりも高くなるのです。

また、地震発生時には大人は子どもを守ることに必死になるため、自分自身の安全確保がおろそかになりがちです。冷蔵庫が適切に固定されていれば、親御さんはお子さんの保護に専念でき、家族全員の安全を守ることができます。キッチンは毎日使う場所だからこそ、事前の備えが家族の命を守る重要な鍵となるのです。

冷蔵庫の固定は、家族の安全を守るための大切な備えです。転倒のリスクを減らせば、地震発生時に親が子どもを守ることに集中できます。また、冷蔵庫は地震発生後の在宅避難時の備蓄庫になります。家庭で今すぐできる対策や命を守る行動については、こちらの記事を参考にしてみてください。

「いつかやる」では間に合わない?子どもとおうち防災 | Sodate(ソダテ)

地震の揺れと冷蔵庫の挙動

地震の揺れ方には、縦揺れと横揺れがあります。まず縦揺れ(P波)が到達し、その後、より大きな横揺れ(S波)が到達します。縦揺れによって冷蔵庫が持ち上げられ、床との摩擦が一時的に小さくなるため、その直後に横揺れが加わると、冷蔵庫は滑りやすくなり、大きく移動してしまう可能性が高まります。

特に注意が必要なのは、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ、長周期地震動です。この揺れは高層階では下層階に比べ揺れが大きくなる傾向があり、、冷蔵庫のような重量物を大きく揺さぶることもあります。。揺れの周期と冷蔵庫の固有振動数が共振すると、想像以上に激しく「移動」が発生する危険性があります。こうした物理的な特性を理解することで、転倒防止対策の重要性がより明確になります。

冷蔵庫の転倒・移動を防ぐ方法

冷蔵庫の地震対策には、いくつかの効果的な方法があります。ここでは、すぐに実践できる基本的な対策から、より強固な対策まで段階的にご紹介します。

転倒防止ベルトによる固定

転倒防止ベルトは、最も手軽で効果的な冷蔵庫の地震対策の一つです。冷蔵庫の上部や側面を天井や壁に固定することで、転倒を防ぎます。ホームセンターやインターネットで1,000円から3,000円程度で購入でき、取り付けも比較的簡単です。

ベルトストラップには、両端に壁に取り付けるためのビス穴と、固定する家具などに貼りつける強力な粘着テープが付いています。壁に取り付けるには、もちろん壁の強度やビスを打ち込める場所を確認しましょう。使用するビスは5mm以上の太さが必要です。壁の中の強度を知るためには、壁センサーや下地さがし針でわかりますから、間違わないように、間柱(縦材)と胴縁(横材)を確認したうえで、しっかり固定してください。
 家具などの粘着テープを接着する面は、あらかじめホコリや油汚れをアルコールなどできれいに落とし、ベルトストラップがよく粘着し、強度が発揮されるようにしてください。

配置場所の見直しと周囲の安全確保

冷蔵庫をどこに置くかも、地震対策において重要な要素です。可能であれば、倒れても避難経路を塞がない場所、家族がよく通る動線、出入り口周辺から外れた場所に配置しましょう。また、冷蔵庫の近くに割れやすいガラス製品や危険物を置かないことも大切です。

冷蔵庫の上に電子レンジや炊飯器などを置いているご家庭も多いですが、地震時にはこれらが落下して危険です。また冷蔵庫上部は、耐熱や耐荷重の仕様に設計されていないため、重い物を置くと負荷がかかり、故障の原因にもなります(小型冷蔵庫など例外はありますので、取扱説明書をご確認ください)。できるだけ冷蔵庫の上には物を置かず、どうしても置く必要がある場合は滑り止めマットを敷く、、軽量のものに限定する、固定ベルトで固定するなどしましょう。冷蔵庫周辺の整理整頓も、二次被害を防ぐために欠かせません。

さらに、定期的な点検も忘れてはいけません。ベルトの緩みやマットの劣化は、時間とともに進行します。半年に一度程度、冷蔵庫の固定状態を確認し、必要に応じて締め直しや交換を行いましょう。この習慣が、いざという時の安全を確保します。

冷蔵庫の脚の調整と安定性

多くの冷蔵庫には調整可能な脚が付いています。この脚を適切に調整することで、床との接地面を最大化し、安定性を高めることができます。水平器を使って冷蔵庫が水平になるように調整しましょう。

床が傾いている場合や凹凸がある場合は、脚の高さを変えて水平を保ちます。ただし、脚を必要以上に高くすると重心が上がり、かえって転倒しやすくなるため注意が必要です。また、脚のゴムキャップが劣化している場合は交換しましょう。滑りやすくなっていると、地震時の移動リスクが高まります。

扉のタイプと地震時の挙動

冷蔵庫の扉には片開きタイプと観音開きタイプがあります。片開きタイプは扉が開く方向に重心が偏りやすく、その方向への転倒リスクが高まります。扉の開く方向を壁側にするなど、配置に工夫が必要です。地震の衝撃で扉が開いてしまうこともあるので、ドアストッパーなどで扉が開かないようにしましょう。

観音開きタイプは重心が中央にあり比較的安定していますが、こちらも地震の揺れで両扉が開いてしまうと中身が飛び出す危険があります。ドアストッパーや引き出しストッパーーを取り付けることで、地震時の扉の開放を防げます。特に小さなお子さんがいる家庭では、普段から活用することで、地震対策と手を挟んだり危険なものを取り出して事故を防ぐ安全対策を兼ねることができます。

地震後の冷蔵庫の安全確認と対処法

地震が発生した後、冷蔵庫の状態を確認し適切に対処することも大切です。無理に使用すると発煙、発火につながる恐れがあります。

地震直後の初動対応

地震の揺れが収まったら、まずは家族と家の安全を確認してください。火の始末をしましょう。家の周囲で火事はないか、避難指示が出ていないかも確認しましょう。このようにその場にとどまっていいことが確認できた後、冷蔵庫の状態をチェックします。揺れている間や緊急地震速報を受信した時に冷蔵庫を押さえにいったり、様子を見に行くのは絶対にやめましょう。 冷蔵庫の様子を見に行くのは、揺れが完全におさまってからにしてください。揺れている最中に冷蔵庫に近づくと、転倒や破損に巻き込まれる危険があります。

冷蔵庫が傾いている、移動している、転倒している、異音がするなどの異常があれば、すぐに電源プラグを抜いてください。無理に使用すると漏電や火災の原因となります。

冷蔵庫の扉が開いてしまっている場合は、中身の状態を確認します。食材が床に散乱していれば片付けますが、ガラス瓶などが割れている可能性があるため、厚手の手袋をして作業しましょう。冷蔵庫内に異臭がする場合は、食材の腐敗が始まっている可能性があるため、早めに処分します。

冷蔵庫の損傷チェックポイント

地震後の冷蔵庫の損傷チェックには、いくつかの重要なポイントがあります。まず外観を確認し、へこみや亀裂がないかを見ます。特に背面や側面は見落としがちなので注意深くチェックしましょう。

次に、冷蔵庫のコンプレッサー部分を確認します。異音がする、振動が大きい、異臭がするなどの症状があれば、内部が故障している可能性があります。また、冷蔵庫の水受け皿に水が溜まりすぎている場合は、排水系統が損傷している可能性があります。これらの異常が見られた場合は、電源プラグを抜き、専門業者に点検を依頼しましょう。

停電時の冷蔵庫管理

大きな地震の後は停電が発生することがあります。停電時の冷蔵庫の管理方法を知っておくことで、食材の保存期間を延ばすことができます。停電が発生したら、まず冷蔵庫の扉を開ける回数を最小限に抑えましょう。扉を閉めたままであれば、冷蔵室は2~3時間、冷凍室は約12時間から24時間程度、冷気を保つことができます。

保冷剤や氷をあらかじめ冷凍庫に多めに常備しておくと、停電時の保冷効果を高められます。保冷剤がわりに、ご飯やペットボトルを凍らせておくと備えにもなります。レシピが決まるまでドア開閉しないと徹底し、傷みやすい冷蔵庫の物から食べる・調理するようにしましょう。保冷対策として冷蔵室は7割収納、冷凍室はきっちり詰めるを実践することで、普段の電気代節約にもつながります。また、冷蔵庫内の温度を確認するために、冷蔵庫用の温度計を設置しておくと便利です。冷蔵室が10度以上、冷凍室がマイナス15度以上になった場合は、食材の傷みが進んでいる可能性が高いため注意が必要です。

冷蔵庫の再稼働と食材の取り扱い

停電が復旧し冷蔵庫を再稼働させる際には、いくつかの注意点があります。まず、すべての家電製品の電源プラグはコンセントから抜いておくことをおすすめします。一斉に運転を始めるとヒューズやブレーカーが飛ぶなど電気製品への悪影響が考えられます。製品ごとに電源をいれて動作するか、異常がないことを確認してください。冷蔵庫は電源を入れてから冷蔵庫内が十分に冷えるまで数時間かかるため、その間は扉の開閉を控えましょう。

食材の取り扱いについては、停電時間と保存状態によって判断します。生鮮食品は傷みやすいため、停電が数時間以上続いた場合は廃棄を検討します。冷凍食品は完全に解凍されていなければ再冷凍できますが、一度解凍されたものは品質が低下するため早めに調理して消費しましょう。乳製品や調味料も、異臭や変色がないかを確認してから使用します。

専門家からのアドバイスと最新の地震対策技術

地震対策の分野では、日々新しい技術や知見が生まれています。専門家の意見を参考にすることで、より効果的な対策を講じることができます。

防災の専門家が推奨する冷蔵庫対策

冷蔵庫は地震時、備蓄庫と凶器の二面性があります。凶器にしないためには転倒防止対策や適切な配置をすること。備蓄庫にするためには、普段から冷蔵庫の保冷対策や冷蔵庫内の瓶を倒れにくくすること。この大きく2つの対策で、震度6強程度の揺れでも冷蔵庫の転倒を防ぎ、備蓄庫として活用できる確率が大幅に向上するとされています。また、定期的な点検とメンテナンスの重要性も強調されています。固定器具は経年劣化するため、少なくとも年に一度は状態を確認し、必要に応じて交換することが望ましいとのことです。

最新の耐震技術を搭載した冷蔵庫

家電メーカー各社は、地震対策を考慮した冷蔵庫の開発を進めています。例えば、重心を低く設計した冷蔵庫、地震を感知すると自動的に扉がロックされる機能を持つ冷蔵庫、床との接地面を広げた耐震脚を備えた冷蔵庫などがあります。

また、庫内の棚やポケットにも工夫が施され、地震の揺れで中身が飛び出しにくい設計になっているモデルもあります。これらの最新技術を搭載した冷蔵庫は、従来のモデルに比べて地震時の安全性が格段に向上しています。冷蔵庫の買い替えを検討する際は、こうした耐震機能の有無も選択基準の一つにすると良いでしょう。

地域の防災情報と連携した対策

お住まいの地域によって、地震のリスクや想定される揺れの強さは異なります。自治体が公開しているハザードマップや地震リスク情報を確認し、地域特性に合わせた対策を講じることが重要です。例えば、軟弱地盤の地域では揺れが増幅されやすいため、より強固な固定が必要です。

また、地域の防災訓練に参加することで、実践的な知識を得ることができます。訓練では、地震時の初動対応や避難方法を学べるだけでなく、地域の防災リーダーや専門家から直接アドバイスを受ける機会もあります。また地域と繋がることもできるので、家庭の防災力を高める大きな力となります。

地域の特徴を踏まえた備えを考える際には、家庭で取り入れやすい対策を知っておくことも大切です。日頃からできる工夫や、すぐに実践できるポイントについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

自宅の地震対策|今すぐできる6つの備えとは? | Sodate(ソダテ)

賃貸住宅での地震対策の工夫

賃貸住宅にお住まいの方は、壁に穴を開けられないなどの制約があり、地震対策に悩むことも多いでしょう。しかし、賃貸でも実施できる対策は数多くあります。耐震マットや突っ張り棒式の転倒防止器具は、退去時に原状回復が可能で賃貸住宅に適しています。
※マットやストッパーの単独使用は冷蔵庫のような大きな家具の場合には、一般的には適しません。ポール式と併用して使用することで器具の効果が高くなります。

また、DIYアイテムを使えば、壁や天井に穴を開けずに支柱を立てることができます。この支柱を利用して冷蔵庫を固定する方法もあります。賃貸住宅でも工夫次第で十分な地震対策が可能なので、諦めずに取り組みましょう。

賃貸でもできる地震対策は意外と多く、工夫次第で安全度を大きく高められます。耐震マットや突っ張り棒、ディアウォールなど原状回復できるアイテムを活用して、無理なく備えを進めましょう。防災グッズの 選び方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

防災グッズで本当に必要なものは?防災準備特集 | Sodate(ソダテ)※昨今の天候変動により、暑さ・寒さ対策グッズも追加しておきましょう。

まとめ

冷蔵庫の地震対策は、家族の命を守るための重要な備えです。転倒防止ベルトなどを活用した対策で、地震時の危険を大幅に減らすことができます。

冷蔵庫のタイプや設置環境に合わせた適切な対策を選び、定期的な点検とメンテナンスを行うことが大切です。また、地震後の対応方法や停電時の管理方法を事前に知っておくことで、慌てずに行動でき、普段の生活にも役にたちます。

離れて暮らしている家族、高齢者、障がいがある方などがいる場合は、地震対策をしてあげる配慮も大切です。冷蔵庫の固定や配置換えには体力が必要です。自身で対策できない場合は専門家や代行をたのみましょう。

最新の耐震技術や家庭用蓄電池などの導入も視野に入れつつ、家庭の中で一番危険物の多いキッチン全体の安全性を高めましょう。家族で防災意識を共有し、地域の防災活動にも参加することで、より安心な暮らしを実現できます。今日からできる対策を一つずつ実践し、自分自身と大切な家族の安全を守りましょう。

アイフルホームでは、防犯や防災をテーマにした住まいづくりのご相談を受け付けています。地震対策や家具固定といった身近な備えから、災害時のリスクを減らす間取り・設備の考え方まで、暮らしに合った対策を具体的に知ることができます。防災・防犯対策についてしっかり考えたい方は、ぜひこちらのページをご覧ください。

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