リビング学習と聞くと、皆さんはどのような光景を思い浮かべますか?母親は台所で料理、小学生の子どもはダイニングテーブルで勉強、父親はソファーで新聞、そして3人が笑顔で視線を交わし合う、そんなイメージでしょうか。
実際の生活では、残念ながらいつもそんなにうまくいくわけではありません。特に子どもが小学校低学年のうちは、リビング学習に限らず、親がしっかり環境を整えて勉強の習慣作りをサポートすることが必要不可欠です。
今回は子どものリビング学習を検討中の方に向け、家づくりの際に覚えておきたい間取りについてお伝えしていきます。
10歳までに5回は変わる!?子育て世帯のリビングの使い方
リビング学習について考える前に、まずは子どもの年齢別に、リビングの使い方そのものについて見ていきましょう。収納家具の配置は、そのときのライフスタイルに合わせて柔軟に変えていく必要があります。実は、リビング学習は小学生からとは限りません。もっと年齢の低いうちから取り組めることもありますので、どの年齢にも対応できるリビングの活用法をご紹介します。
①0歳〜1歳
ねんねからからあんよまで、1年で急成長を遂げるこの時期は、とにかく広く、安全な環境づくりが重要です。とはいえ、親が24時間張り付いて監視するわけにもいきません。子どもがよじ登れる高さのテーブルや台は、一時的に別の部屋に移動するなど思い切った工夫も必要です。
②1歳〜3歳
動きが活発化し、おもちゃや絵本も増える時期です。お絵描き、粘土、パズル、シール遊びなど、台を使った作業もできるようになります。子ども用の背の低い椅子とテーブルがあると便利ですし、この頃から学習の習慣作りが徐々に始まっていると考えてもよいでしょう。また保育園に通い始めるお子さんの場合、ママの動線を考慮して保育園グッズ一式をリビング内に作ることもあります。
③年少〜
通信添削や年齢に応じたワークを取り入れる家庭が増え、子どもが自分で出し入れしやすい収納を考える時期です。幼稚園に通う場合は制服や幼稚園バッグ、手提げ袋など、一気に個人の荷物も増えます。ある程度の身支度は一人でできるようになるとはいえ、決められた時間に合わせて動くのはまだまだ難しい年齢。やはりママ自身がやりやすいように、幼稚園道具一式をリビングに置くのか、別の場所に置くのかは大切な検討事項でしょう。
また、園で作った工作を飾るスペースがあると子どもは喜びます。このほか、夏休みには工作道具や粘土など普段から幼稚園に置いてあるものを全て持ち帰ることも多く、 これらの置き場所を確保する必要もあります。
④年長〜
習い事を始めるお子さんも徐々に増えてくる頃で、習い事の宿題や練習をリビングでする場合も多いでしょう。小学校入学に向け、勉強を意識し始めるのもこの時期で、実際にひらがな・カタカナの練習を始めるケースも多いです。
しかし子ども部屋を用意したとしても、寂しがったり怖がったりして、実際はリビングでやるか、ママが一緒に子ども部屋に行くことも珍しくありません。そして、下のお子さんが生まれているケースもあり、その場合はリビングの区分けが少しずつ複雑化してくるでしょう。
⑤小学校1年生〜
小学生になると本格的な勉強が始まりますので、学習スペースをしっかり確保してあげることが重要です。ランドセルや教科書一式は、いつも勉強する場所の近くに置き場を作ることが望ましく、リビング学習をする場合は、これらの置き場も一緒に考える必要があります。その他、鍵盤ハーモニカや絵具など、 個人の荷物はさらに増えていくので、片付けが難しいと感じる方も多いかもしれませんね。
リビング学習を視野に入れた間取りを考えるときのポイント3選
リビング学習をする場合、座って勉強する場所の確保だけでなく、前述のように、勉強道具の収納場所も決める必要があります。また、多くの時間をリビングで過ごすうちは、座学以外に学習に効果的なものを積極的に取り入れたいですね。ここでは、子どもの学習に適した間取りについてお伝えしていきます。
①ポスターを貼れる壁を広くとる
学習の定着に効果的な方法のひとつに「何度も繰り返し見る」というものがあります。
例えば漢字を例に挙げてみましょう。いきなり知らない漢字の書き順を習い、10回ずつ書きましょうと言われてもなかなか覚えられないですし、なにより、つまらないですよね。漢字は書く前に読めるようにするのが基本です。そのため漢字ポスターをリビングに貼っておくことは非常に効果的です。
また、世界地図や日本地図、九九表を貼るのもおすすめです。都道府県名や地域の特産物は社会のテストでも出てきます。これらを習う学年になって強制的に覚えさせるのではなく、普段の生活の中で自然と繰り返し視界に入れることで、無理なく定着することが期待できます。
他にも、子どもが描いた絵を貼ったり、家族写真を飾ることもおすすめです。子どもは、自分のことについて話してもらったりほめてもらったりすると、気持ちが前向きになって、勉強のやる気へとつながりやすいです。親にとっても、やさしい気持ちになれたり、癒しを感じたりできる効果もありますね。
そのためにも、全ての壁が家具に隠れてしまわないようなイメージを持っておくと良いでしょう。
②ダイニングテーブル以外の机を置くスペースを確保する
リビング学習で最も取り組みやすいのは、食事をするときのテーブルを使う方法です。しかしこれには、少し厄介な面が潜んでいます。
例えば、子どもがダイニングテーブルで学校の宿題をしている真っ最中に、 夜ご飯が完成したとします。この場合、子どもがとれる行動は次の2つです。
・宿題を中断して、勉強道具を片付ける。夜ご飯を食べ終わってからテーブルの食器を片付け、再度ノートを広げて宿題の続きをやる。
・宿題が終わるまで家族には夜ご飯を待ってもらう。もしくは、他の家族は先にご飯を食べ始め、自分は宿題が終わり次第食べる。
前者の場合、せっかく取り組んでいたものを中断することで思考も分断されてしまうため、宿題の再開時には、何をやっていたかを思い出す作業から入ることになります。これでは効率が悪いですし、面倒だという気持ちが働き、取りかかりも遅くなりがちです。
後者の場合は、一連の流れで最後まで宿題を終わらせることはできますが、 家族がご飯を待つことになるか、宿題に対する集中力が切れてダラダラと取り組むことになりかねません。
そのため食事のテーブル以外に、もう一つ作業ができるスペースを作っておくとよいでしょう。どちらで宿題をやるかは子どもの自由です。 ダイニングテーブルでやっていた場合は、ご飯ができたらノートを開いたまま作業台に勉強道具を移せますし、食べ終わった後もすぐに宿題の続きに取りかかることができるメリットがあります。
リビングに子ども用の学習机を無理に置く必要はありません。勉強するのに必要なスペースが確保できれば良いので、折り畳みのテーブルやデスクを活用し、リビングを広く使いたい時には片付けておくのもひとつの方法です。
③子どもの成長段階に合わせた家具配置パターンを複数考えておく
前述したように子どもの年齢によってリビングの使い方は次々と変化していきます。また、いつまでも子どものリビング学習が続くわけでもありませんから、いずれは大人好みの空間を作ることも可能です。つまり、子どもの成長段階に合わせて、 リビングで使う家具や収納棚の種類・レイアウトはどんどん変えていって良いのです。
家族のライフスタイルに合わせて柔軟にリビングを使えるよう、家具や収納棚の配置パターンをいくつかシュミレーションしておくことをおすすめします。その際は、折りたたみ式のものを使ったり、棚の高さを変えられる本棚を用意したり、家具自体を変形できるものを含め考えておくと、何通りものリビングの使い方が考えられるでしょう。
リビング学習のその先には?家庭内フリーアドレスのすすめ
子どもが静かな学習環境を好むようになったり、受験前で一人で集中したいと言い出したりした時には、リビング以外にも落ち着いて勉強できる場所が必要になってきます。
それに加え、今後はオンライン授業がますます普及してくることが予想され、家族の気配や物音がするリビングしか勉強場所がないという状況は、少し厳しいかもしれません。
こんな時に考えておきたいのが「家庭内フリーアドレススタイル」です。
フリーアドレスオフィスという言葉はご存知でしょうか。オフィスの中で固定席を持たずに、ノートパソコンなどを活用して自分の好きな席で働くワークスタイルのことで、近年この方法を取り入れている会社も増えてきています。
皆さんもきっと、パソコン作業や読書をする際、カフェや図書館に行くと気分が変わって集中力が増すという経験をしたことがあるでしょう。
家庭内の勉強も同じです。その時の気分や勉強内容に合わせて、ダイニングテーブル、リビングの一角、個室など、子ども自身が場所を選択できたら素敵だと思いませんか?
まとめ
いかがでしたか。従来のように、子どもの人数分だけ独立した子ども部屋を作るのではなく、リビングを含め、この先何十年と住んでいく家全体の使い方を何パターンも想像しながらレイアウトや家具配置を考えていくのは、夢があっておもしろいですよ。まずは子どもの学習が定着することを目的にリビング学習を取り入れ、この先もずっと、居心地の良い環境で家族仲良く過ごしていけると良いですね。